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幻想料理【坂田 悠】

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  • 2016/06/11

 幻想料理
【坂田 悠】
平成12年1月号


「ヒバリの放射線和え」

 かつては茨城県の東海村でしか産しなかったのだが、このところの原発ラッシュで全国各地でも食することができるようになった。とくに青森県六ヶ所村近辺のヒバリが最上とされている。

この料理は、素材を得るためのトラップを作るところから始めなければならない。
まず、根気よくヒバリの巣を捜すことから始める。空高く鳴くヒバリが大地に舞い下りたら、ほふく前進で静かに、ヒバリに気付かれないように追いかけ、ヒバリの巣の位置を確認する。ヒバリが巣から離れ、空高くさえずっているとき、巣の上1.8メートルのところに直径三メートルほどの霞網をしかける。

ヒバリが巣に戻り、落ちついたところを見計らって(落ち着いているかどうかはヒバリに聞かないとわからないが)巣にむかい石を投げる。この石はできれば安山岩か玄武岩がよい、なぜならこれはセレモニーだからだ。石を投げる、おおきな音がでる、ヒバリ驚く、驚いて飛び上がる、霞網にひっかかる、ヒバリもがくけれどもう逃げられない、かくしてヒバリ捕まりカゴの中へ。

まず、鳥カゴに入れたヒバリを、原発の冷却水排水口近くに三昼夜おく。(餌と水は切らさないようにする)三昼夜おいた後、放射能を含んだ冷却水を汲み、カゴごと水浴させる。力尽き、ぐったりしたところで取り出し、乱暴に濡れそぼった羽をむしりとる。ここで鳥肌たつような思いがするかどうかで、この料理の食後感は大きく変わるのでそのつもりでいるほうがよい。
腹を開き、内臓を取り出し、空に投げ上げる。そうすると、体はここにあるはずのヒバリが幻想のように空にはばたき舞い上がってゆく、えーサテサテお料理。

羽をむしり、腹から裂き、開きにし竹串で形を整える。原発近辺の放射能を含んだ大気に一昼夜さらす。
晒したのち、竹串をはずし骨もはずす。身を揃え千切りにする。器に肉を入れ左手にもつ。右手にガイガーカウンターを携え、今あなたがいる原発の中で最もカウンターの針が揺れる場所を捜し、おもむろに器の中の千切り肉をかき混ぜる。
皿にザワークラウトと一緒に盛り付け混ぜ食す。

舌に心地よいシビレが走り、あなたは異時限の味覚のとりこになることうけあいです。

 

「鉄腕アトムのアトムヤンクン」

 手塚治虫氏がこよなく愛したので有名なスープ料理。
ナンプラー、レモングラス、ミント、鷹の爪、鉄腕アトムの爪の垢、お茶の水博士の鼻油少々、ライム二ヶ。
具は季節の野菜、ジャングル大帝レオの肩肉、ドクターブラックジャックのメスでさばいたイワシ。

土鍋に水を入れ、ナンプラーと鷹の爪、アトムの爪の垢を入れ沸騰させる。
五分ほどの野菜、肩肉、イワシを入れ火が通ったら、レモングラス、ミント、鼻脂、を入れ塩で調味してアトムの長靴型の器に入れサービスする。

このスープを飲むと、数分後にはアトムを始め、手塚治虫のマンガのキャラクター達が頭の中に次から次へと表れ、楽しい一時を過ごすことができる。

 


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作成日2002年8月5日