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人のために行動 21世紀の豊かさ?ベトナムストリートチルドレンの救済活動をする小山道夫先生の講演から?【松浦正美】

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  • 2016/06/11

人のために行動 21世紀の豊かさ
?ベトナムストリートチルドレンの救済活動をする小山道夫先生の講演から?
【松浦正美】
平成11年7月号

 



▲ 右から小山道夫先生、「子供の家」のニューちゃん、トアン君、通訳のラムさん

 「21世紀の主役は、誰?」との問いに答えを返すことは難しい。しかし、6月22日、三島市ゆうゆうホールで開かれた「ベトナムの夕べ」における小山道夫先生の講演は、この問いの答えを示してくれたような気がする。

先生は、7年前の夏休みにベトナムを訪問。街の公園や橋の下で生活する子ども達(ストリートチルドレン)との偶然の出会いが先生の人生を大きく変え、翌年の9月、23年間勤めた東京都板橋区の小学校教員を退職。ベトナム中部の古都フェ市に単身で渡り、ストリートチルドレンの救済活動を始めた。

先生の活動は、フェ市にいるといわている約150人のストリートチルドレンを一人ひとり探し、両親や本人の同意を得ながら日本のODA(政府開発援助)やNGO(民間の海外支援団体)の支援で作った「子供の家」に子ども達を入所させ、学校に通わせている。この6年間で、120人以上の子ども達が入所し、現在70人の子ども達と生活を共にしている。
さらに、現在は「子どもの家」ばかりではなく、障害のある子どもたちの実態把握や障害を緩和させるための医療支援活動も日本のJICAの支援を得て始めた。

「なぜベトナムの子ども達を援助するの、日本にだって困っている子はいるのに」「ベトナムの子は、ベトナム政府がやらなければならないことで、ストリートチルドレンの救済が必要であれば、ベトナム政府に働きかけて政府が施設をつくるようにすることが大切ではないか」「ベトナム全土に5万人もいるといわれているストリートチルドレンのうち、たった100人ばかり救済したところで、何なるのだ」「子どもは、自力で立ち直ることができる力をもっている。半端な救済活動は、こうした子の自力更生の芽を摘むことになり、大きな間違いを犯している。」など先生にいろいろ理屈をつけて批判をする人々がいる。そうした批判も、尤もなところもある。しかし、現実に今、困っている子どもに対して、少しでもその状況を緩和させることができるのであれば、してあげたい。ただそれだけです。それは、自己満足といわれても、かまわない。我々は、理論や理屈のために生きているのではない。教師として自分が子どもたちに出来ることをできる範囲でこつこつやっていく。そのことで立ち直れる子がいれば、日本だろうが、ベトナムだろうが構わない。たまたまベトナムでストリートチルドレンに出会って、その子ども達が人生のスタートラインに立てるようにお手伝いしているだけです。と語る。先生の主張は極めて単純明解である。

日本はバブル崩壊で、大変だ。経済をたてなおさなければ、という議論が盛んである。しかし、世界で何位とかの議論は、ベトナムにはない。日本は、もう十分豊かである。

高度経済成長期の日本は、物を豊富に手に入れることが豊かなことであると思ってきた。しかし、我々は「もの」を豊富に手に入れることはできたが、豊かさを実感できたか。というと、どうもそうではないようだ。

小山先生の人生は、自分の生活を犠牲にしているようであるが、実はそうではない。先生は貪欲に自分の豊かさを手に入れようと、奮闘しているように思う。豊かさは、物が豊富にあることではない。そのことの生き証人が小山先生。21世紀はそうした豊かさを求める人々が主役になるのかな。そうだといいね。


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作成日2002年8月6日