鷲頭山岩トレ【今泉良山】
- 環境・情報
- 2016/06/11
鷲頭山岩トレ
【今泉良山】
平成13年2月号
沼津市志下の交差点にスルガ銀行の駐車場がある。ここから鷲頭山の頂上がスックと立ち上がっているのがよく見える。その左斜面の中腹に、樹木を剥ぎ取ったように白っぽい岸壁が見えている。
5人は他のハイカーと明らかに違う大きなザックを背負って歩き出した。12月初めにしては、暖かすぎる陽射しに早くも、額に汗をにじませながら。これから始まる岩登りに期待と不安を抱きながら、若者のように会話を弾ませている。実はリーダーの今泉は、岩登りのリーダーをするのが初めてなのだが、不安を胸の中に仕舞い込んで表面は何食わぬ顔で歩いていた。志下峠への山道から、枝道を左に入ると岸壁を辿る道が続いている。判然としないその曲がり角には、木の枝にペットボトルがぶら下げられていた。初冬の山の土からは、あの独特の草いきれが感じられない。
昨日の午前中は雨模様だったが、午後からは天気が回復し田野で、岩はすっかり乾いていた。沼津の街並みの向こうに奥駿河湾の海が光り輝いていた。ここは山と海が一体となっていて、その中に人の心をやさしく包み込んでくれる。
ハーネスとの装置、エイトノットの結び方、これはヌンチャクなどと岩登り特有の説明を終えると、いざ岩へ。リーダーが上部にあるボルトにロープを掛けてくると、次はトップロープの方法で登り始める。ひとりは登り、他のひとりは地上で確保する。不安が夢中に変わり、上へとたどり着いたときは喜びに変わる。「ヤッタ」という達成感が何とも言えない甘美な世界に誘い込んでくれる。
山登りには花の稜線歩き以外ににも、多くの楽しみ方がある。
山に学び、山に遊ぶ、そして山に憩う。
山全体の魅力を思う存分味わってみたい。ひとしきり下界の景色を眺めたら次は下降だ。懸垂下降用にロープを付け替えて、自分で岩を歩くように降りる。慣れてくると、これがまた面白い。トントンと足裏を軽く岩に打ちつけながら、スルスル滑るように降りる。見事地上に着いたとき、気分がすっとする。「終わったー!」と同時に「もう一度やりたーい」という気持ちが湧いてくる。
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作成日2002年8月1日