第8回 ベトナム スタディー・ツアーに参加して
- 国際支援活動
- 2016/06/20
第8回 ベトナム スタディー・ツアーに参加して
すべてのものに、ありがとう
?足立 悠?
ベトナムから帰国して2週間。普段の生活に戻り、ふとベトナムでの出来事を思い出すことがある。ベトナムでの1週間はあっという間に過ぎていったが、現地で体験した暑さ、におい、味、景色・・・どれもはっきりと覚えている。
今回、なぜベトナムスタディーツアーに参加したのか、帰国後にもう1度考えてみる。それは「発展途上国の現状を見たい」という強い思いである。買い物をして観光をして楽しかったという思いで終わる旅ではなく、観光では見られない、その国の真の姿を見たい、そこから将来について考えたいと思っていた。
ベトナムについては、世界史で学んだ「ベトナム戦争」「建国の父・ホーチミン」「メコン川」程度の知識しかなかった。そのような状態で旅立ったことが今でも悔やまれる。もっとベトナムについて知っていれば、様々なことを吸収して帰国できたのかもしれない。
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私はこの旅で、統一会堂へ行くのが何よりの楽しみであった。ベトナム戦争終結の地となった統一会堂。南ベトナム軍がここに突入した際、国旗を振りながら「PEACE FOREVER!!」と叫んでいた。その映像のことをずっと忘れることが出来なかった。
日本からハノイへ行き、障害児の施設訪問。今まで見たことのない未知の世界を知った。私たちが行くと大喜びで駆け寄ってくる子供、何が起きたのだろうという感じで呆然としている子供、黙々と作業をしている子供・・・。当然のことだが、彼らは障害児になりたくてなったわけではない。
彼らの祖父母、両親がベトナム戦争で枯葉剤の被害を受け、それが遺伝したのである。戦争を知らない世代の子供なのに、戦争の被害だけは受けている、という事実をなかなか受け入れることが出来なかった。どの施設の方もおっしゃっていた「援助が必要なのです。」という言葉。さらに、どんな援助でもいいと言う。確かに、お金やモノの援助も必要である。しかし、リハビリ師養成などの目に見えない、技術の援助も必要な気がする。
施設を訪問するうちに、1つの疑問が浮かんできた。「援助が必要」といっているが、国連からの援助はあるのか。私が模擬国連というサークルに所属しているため、国連に興味があり、また何かと国連について考える機会は多い。しかし、国連からの援助はないと言っていた。国連ならば、お金、モノなどの援助のほか、スタッフの派遣などもできるはずだ。なぜベトナムへの支援はないのだろう・・・。旅行中、ずっと考えていたが、答えを出すことは出来なかった。
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障害児施設訪問以外にも、戦争博物館、軍事博物館、クチトンネルなどで、ベトナム戦争についての知識がついた。ベトナム戦争反対運動が日本であったこと、また日本人カメラマンも戦争の犠牲になったことから、戦争が身近なものに感じられた。日本が高度経済成長を遂げ、東京オリンピック開催と活気があった時期に、同じアジアの中で、こんなにも大きな戦争が行われていたということが信じられなかった。
私が1番この旅で楽しみにしていた、統一会堂。ベトナム戦争の悲劇など無かったかのように、堂々と建っていた。外観の堂々とした様子に負けない位美しかった数々の部屋。2階からテラスに建ち、ホーチミン市内を見渡してみる。そこには発展した美しいベトナムの街並みがあった。すると「PEACE FOREVER!!」という解放軍の叫びとともに、かつて映像で見た統一会堂の様子が頭に浮かんだ。
平和―それは争いごとのない世界のことで、誰もが望んでいるだろう。私が通っていた高校はミッションスクールで、修学旅行では長崎の教会巡りをするのが恒例である。その際、原爆を体験した神父様がこうおっしゃっていた。「平和とは、人の痛みを理解することなのです。」今回の旅で、私はベトナム戦争の被害者の痛みを理解することができた。「学校に行きたい」と言っていた女性、「楽しみは何もない」と言っていた女性・・・。みんな同じ人間なのにどうして、住む場所の違いからここまでの差が生まれてしまうのだろう。彼らだって、日本に生まれていれば、学校にも行けたし、楽しみもあったのかもしれない。彼らのような、枯葉剤被害者の事を、1人でも多くの人に知ってもらいたいと願っている。二度とこのような大惨事が世界で起きないようにと、世界平和を望む心は増す一方である。将来は政治学や平和学などを勉強し、世界の戦争、紛争を解決できるような人間になりたい。
最後に、このようなすばらしい、貴重な体験を出来たことに感謝する。ベトナムで出会った、ガイドのハーさん、トーさん、マインさん。ハノイで私たちの買い物などを案内して下さったみほこさん、平和村・友好村・タイビン省リハビリセンターの職員の方々。障害児宅訪問で訪問させていただいた家族の方々・・・。数え上げればきりが無いが、彼らには感謝の気持ちでいっぱいだ。そして、一緒に旅をし、貴重な体験をした12人の素敵なメンバー・松浦さん、河合さん、深澤さん、庄司さん、伊藤さん、三枝さん、吉原さん、神馬さん、山本さん、みきちゃん、なっちゃん、ちなつちゃん。この12人で旅行できて、本当に楽しかった。この旅のことを忘れず、それぞれの道を歩んでいきたいですね。ありがとうございました。